2012/02/24

ほとばしる線と色~画家・秋山俊也/秋山絵画修復工房

力強い線、躍動する色、あふれ出るエネルギー。

写真:力強い絵たち

これらの作品を描いたのは、画家の秋山俊也(あきやま・しゅんや)さん、25歳。
自閉症という障害を抱えながら、日々ぼう大な作品を創作し続けているアーティスト。
言葉を使ったコミュニケーションはできませんが、生(ナマ)のエネルギーが作品からほとばしります。

今回は日光市にある自宅兼アトリエを訪ね、作品の数々や創作の様子を取材させていただきました。
お話をお伺ったのは、俊也さんのご両親。
俊也さんが、どのようにして絵画の世界に入って行ったのか聞いてみました。

写真:秋山さんのご両親

「ふつうの子どもさんたちと同じでしたよ。
絵を描くのは遊びのひとつ・・・ただ紙に書くだけでは物足りないらしく、壁や床にまで描いていました・・・」
懐かしむように話してくれたのは、母親の里美(さとみ)さん。

父・俊幸(としゆき)さんの職業は、絵画の保存や修復のお仕事。
「仕事柄、全国の美術館や画廊を廻るとき、俊也を連れて行きました。
きっとそこで、芸術的な何かを感じ取っていたのだと思います」


写真:秋山さんの作品

「とにかく自由に、絵が描きたいなら描きたいように。
まあ描いているときは、集中して座ってくれるので、子育て中の母親としては楽な面もありましたけど」
と笑う里美さん。

「爆発的に描き始めたのは、中学生のころかな?
一日13時間ぶっ通しで描いていたこともありましたね」
それは思春期の衝動みたいなものじゃないかと理解して、俊幸さんはじっと見守っていたそうです。

俊也さんの絵は、その多くが抽象画と呼ばれるものです。

写真:秋山さんの作品2

描くときは、その日、そのとき、その一瞬に集中して、
一心不乱に描き始めます。
ひらめきのようにして掴んだ鉛筆、パステル、絵の具、マジックやボールペン。

写真:一心不乱に描く秋山さん

用意されたスケッチブックに、またたくまに描かれていく線と色。
描いてはページをめくり、描いてはめくり、わずか数十分で、一冊のスケッチブックは作品で埋めつくされます。
スケッチブックそのものが作品と化し、強い存在感を放っています。

写真:スケッチブックそのものが作品です

役目を終えた鉛筆やその削りカスがまるで山のよう。

写真:削りかす写真:役目を終えた鉛筆たち



これもまた作品に見えてしまうほど、その量に圧倒されました。

二階の一室は、そんな俊也さんの大量の作品が保管され、床が抜けんばかりです。
天井に達するほど積まれたスケッチブック。
ページの両面しっかりと描ききってあるものがほとんどだそうです。

写真:積み上げられたスケッチブック

「画材にはこだわりがあるようで、たぶん描くときの感覚が狂ってしまうのが嫌なんでしょう。
スケッチブックや鉛筆なども、100円ショップのものなどでは描いてくれません。
おかげで私たちの財布の中身にまで影響が及んでます」
と、笑う俊幸さん。

俊也さんは作品を自慢することも、説明することもありません。
それでも、全霊をこめて描いた数々の絵は、私の心を揺さぶる何かがあります。

写真:心に訴えかける作品です

写真:心に訴えかける作品2

私たちが訪ねたとき、俊也さんは、“いつもとは違う雰囲気”を察知して警戒したのか、最初は家の中を動きまわったり、別室に閉じこもったりしていました。
しかし、しばらくすると、いつの間にか創作用の服に着替え、家じゅうの電気を付けたり、物の配置を確認したり、ご両親が“儀式”と呼んでいる行動を開始。
私たちに対する警戒を解いて安心してくれたのか、警戒しつつもいつもの創作に入る決心をしたのか、それも分かりませんでしたが、“儀式”を終えた俊也さんは、ひたすらに描き続けました。

写真:一心不乱に描く秋山さん

写真:出来上がった作品

「確かに彼の精神的な面は、4歳児くらいなのかもしれません。
でも、彼をひとりの画家として見た場合、親バカな感情を抜きにしても、その表現力、才能は相当なものだと感じています」
と語る、里美さん。

「アートに関わる仕事をしている私から見ても、ものすごい画家だと思う時があります。
偶然に見える線のひとつひとつを取っても、そこには、アーティストとしての必然性が感じられるんですよね・・・」
俊幸さんもなかば脱帽したかのように、つぶやきました。

スケッチブック一冊の中にも、何らかのストーリーがあるんじゃないだろうか?
そう感じたご両親は、『ドローイング10000点展』と題した個展を開催したことがあるそうです。
少しずつずらしながら重ねあわせ、一枚一枚をめくることができるように貼られた作品。
ひとつの絵をめくると、そこには別な絵があり、その絵をめくってさらに次の絵が現れる。
しかも両面びっしりと描き込まれている。
そうして並べられた絵が、ギャラリーの壁じゅうを埋め尽くす。
さぞや圧巻だったものと思いますが、それでも、10万点ある作品のごく一部。
会場を訪れた人たちからは、感嘆する声と同時に、自然と笑みがこぼれていたそうです。

母親の里美さんは言います。
「あるワークショップで、子供たちに俊也の絵を選ばせたとき、真っ黒に描かれた作品を指した子が、『この黒の中にはヒカリを感じる!』と言ってくれたんです。
息子の絵がキッカケになって、子どもたちの自由な感覚や発想を刺激する。
こんなに嬉しいことはありませんね」

写真:家の壁も作品です

「そうやってたくさんの子どもたちと一緒になってできる文化活動を、広げていけるといいですね。」
最後にご両親はそう語ってくれました。

パワフルな創作の現場を目の当たりにした今回の取材。
作品からほとばしるエネルギーの根源はここにあったのだと実感しました。
今後の活躍も目が離せない画家・秋山俊也さん。
みなさんも秋山さんの絵から、“何か”を感じてみませんか?

写真:作品から目を離せません

 

経歴

  • 1986年生まれ
  • 2003年3月 東京・銀座の画廊宮坂にて初めての個展
  • 2005年2月 東京・銀座の画廊宮坂にて2回目の個展
  • 2006年7月 小杉放菴記念日光美術館にて「秋山俊也 日光アール・ブリュット 想像の根源を求めて」展

秋山絵画修復工房

小杉放菴記念日光美術館

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